「手を離す」という、最後のアサインメント

正直に言えば、少し、悔しかった。

対象となったのは、二人の部下。

一人は「ついていけない」とこぼし、

もう一人は欠勤が続いた末に「辞めます」と告げた。

理由は理解している。

会社としての判断も、組織としての冷徹な流れも。

けれど、僕の心の中には、どうしても飲み込めない感情が残っていた。

丁寧に時間をかけてきたつもりだった。

何度も時間を割き、つまずけば歩みを止め、できるだけ支えてきた。

家族の協力まで仰ぎ、なんとか居場所を守ろうと働きかけてきた。

それなのに、最後は「離れる」という答えだった。

ここを離れたら、これほど恵まれた環境はなかなかない。

これほど本気に、一人の人間として向き合う上司も、そう多くはないはずだ。

本気で、そう思っていた。

けれど、それは傲慢だったのかもしれない。

僕の物差しで測った正解を、無理やり押し付けていただけだったのかもしれない。

マネジメントを16年続けていると、いつの間にか背負うことが、呼吸をするように当たり前になる。

育てる責任。

守る責任。

組織に留まらせる責任。

けれど本当は、人が去ることまで、僕が背負い続ける必要はなかった。

「支えること」と「縛ること」は、紙一重だ。

自分の熱量で、誰かの人生を無理に引き止めようとしていなかったか。

そんな問いが浮かんできた。

ここは、僕にとっていい職場だ。

けれど、それが誰にとっても正解であるとは限らない。

それを認めることは、正直、少し寂しい。

それでも。

手を離すこともまた、部門長としての、最後の大事な仕事なのだと思う。

「第一の机」は、誰かを引き止めるための場所ではない。

それぞれが、自分自身の「本当の机」を見つけるその日まで、ただ静かに隣に座る場所。

それでいいのだと、今は思う。

Second Desk ―― 仕事のあとに、もう一つの机。


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